社労士/社会保険労務士鈴木労務経営事務所(東京都新宿区)

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個別労使紛争について

■個別労使紛争とは

近年、個別労使紛争が激増しているということは、マスコミ等でかなり報じられていますので、経営者の方はよくご存知かと思います。

個別労使紛争とは、簡単にいえば労働者と会社の争いのことですが、従来まで労使間の紛争といえば労働組合と会社の間の争いが中心であったため、それと区別するために従業員個人と会社の争いをこのように表現します。

さて、この個別労使紛争が激増している背景として、メディアや学者等は決まって「景気低迷による労働条件引き下げの乱発」「労務管理の個別化」「欧米文化の流入による労働者の権利意識の変化」といった理由をあげています。

もちろん、上記については反論の余地が無いところであり、これらが個別労使紛争増加の背景にあるのは間違いないといえるでしょう。しかしながら、現実には、これらよりももっと直接的な理由があるように思えて仕方ありません。

■インターネットの普及

一つ目は、「インターネットの普及による情報化」です。

従来まで、労働組合を持たない小規模企業において、個別の従業員が会社に不満を持っていたとしても、それを相談できる窓口がありませんでした(正確にいえば、労政事務所や個人ユニオンなどの相談窓口は昔から存在していましたが、その存在を知っている従業員はほとんどいませんでした)。

結果、従業員個人が何かを相談したいと思っても、弁護士事務所くらいしか思いつかず、その敷居の高さから泣き寝入りするケースがほとんどでした。

その一方で、会社側にはブレーンとなる専門家がつきますので、労働組合に所属しない一従業員と会社など、まるで子供と大人のように、とても同じ土俵で争える立場ではありませんでした。

しかしながら、現在はどうでしょう。インターネットが普及した今、検索エンジンを使えば、あらゆる情報を個人で簡単に調べることができます。

例えば、「うちの会社の有給休暇、何か少ない気がするぞ」と思い検索エンジンに「有給休暇」と入力すれば、すぐに法定の最低給付日数が掲載されているサイトが見付かりますし、「社会保険に加入すると手取りが減るから損だって社長は言うけど、将来大丈夫かな」「残業代の計算に基本給しか入ってないから、残業部分のほうが時給が安い・・・」と何か不審に思うことがあれば簡単にそれらを調べることができます。さらに、具体的な相談窓口や解決方法および実際の事例を示したサイトもありますので、会社と争うということがいっきに具体性を帯びてきます。

つまり、情報化の進展により、従業員側が、個人でも会社と対等に争えるだけのアドバンテージを手に入れたということができます。

インターネットの普及と時を同じくして、個別労使トラブルが増加の一途を辿っていったことは、決して偶然などではないでしょう。

■終身雇用制度の崩壊

2つ目は、「終身雇用制度の崩壊」です。

労使トラブルと終身雇用は、一見すると無関係に思えるかもしれませんが、実は、この二つは表裏一体の関係にあります。

例えば、労使トラブルの原因ベスト1である「サービス残業」について考えてみると、バブル景気の頃はサービス残業が全く無かったのかといえば、そんなことはありません。当時はどの企業も採用活動に力を入れていたものの、それにも増して人手不足であり、ややもすれば今よりもひどいサービス残業が常態であった企業も多いようです。

にもかかわらず、従業員が文句を言わずに必死になって働いたのは、「一生懸命働けばいつかは出世できる」「長く働く会社なので、下手に会社と争うと将来の出世にひびく」という意識が根底にあったことは想像に難くありません。

いわば、終身雇用と退職金というニンジンが、従業員の不満というトラブルのタネを封じ込めることに成功していたわけです。

一方、終身雇用神話が崩れ去った現在は、不満を押し殺して働いてもその先に待っているのはリストラかもしれないことを従業員は知っています。

将来に何の保証もなければ、「もらえるものは今もらおう」「主張できる権利は主張しよう」と考えるのは当然であり、それは欧米型の権利意識などとは無関係の、いわば自然の流れであるといえるでしょう。

まして、若い頃に不満を押し殺して会社に尽くし、ニンジンにたどり着く前にリストラされ、再就職のあてもないような今の中高年の方であれば、前の会社から若い頃の分も含めて取れるだけ取ろうと考えることは人として当然の行動とすらいえるのかもしれません。

■今後の対策

このように考えていくと、昨今の労使紛争激増の流れは今後も止むことはなく、むしろ、今後も増え続けるとみるべきではないでしょうか。この流れは、たとえ景気が回復し労働条件が回復したとしても、それとは無関係に進行していくように思えるからです。

さて、世の中の流れ全てがこの方向に向かっている以上、それを止めることはできません。重要なのは、それにどう対処していくかです。

会社にとって不利なこの流れの中で生き残っていくためには、「紛争を未然に防ぐ対策をとる」、あるいは、「紛争がおきてしまった場合に備えて準備する」といった防衛策を先手先手で打っていくほかありません。「今のところ特に問題がおきていないから・・・」「トラブルになってから考えましょう・・・」といった姿勢で後手後手に回れば、あっという間に波にのまれてしまうほど時代は早く流れています。

 

ところで、会社にとって一方的に不利に見えるこの流れの中でも、会社側に永久に変わらないアドバンテージがあることを忘れてはいけません。

それは、トラブルの拠り所となる就業規則を作成する権利が、いつの時代も会社側にあることです。冷静に考えれば、これはスゴイことであることがわかります。これにより、今後、従業員が、どんなに知識を吸収しどんなに権利意識に目覚めたとしても、会社側がしっかりと対策をとりさえすれば、その圧倒的優位さが変わることはありません。

逆に、従業員を取り巻く環境が時代の変化とともに変わってきているのに、会社だけが以前のままでは、遅かれ早かれトラブルに足をすくわれることになってしまうでしょう。

 

当事務所では、個別労使紛争を未然に防ぐために下記のサービスを提供しています。

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